村で1番の海の男、勝男は鰹を捕ったそばから海へ返すのだと言う。
鰹が嫌いなのか?と村人が尋ねると男は決まってこう言った。
「馬鹿言うなよ、大好きさ。」
ならば何故、彼は鰹を海へ返してしまうのだろう?
※つのめさんのオマージュなんだ!僕達は自由なんだ!
転載元: 「【鰹ますか?オマージュ】カツオとカツオ」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1524
昔は鰹漁で栄えていた海亀村で育ち、男たちの後ろ姿に憧れ自らも鰹漁を始めた勝男であったが、加速する少子高齢化に歯止めが効かず、ついには勝男が村最後の漁師となってしまった。
漁協もわざわざ1人が僅かに釣り上げる鰹を買い取るためだけに遠路はるばる海亀村に人を派遣することを嫌がり、流通手段も失われ、鰹を釣る意義を失ってしまっていた。
しかし、かつての勝男がそうであったように、残された数少ない村の若者の誰かが、鰹を釣る勝男の後ろ姿に憧れて、声を掛けて来てくれるかもしれない──
その思いだけを支えに、勝男は来る日も来る日も海に船を出した。
いつの日かまたこの村が、鰹漁で賑わうことを夢みながら──
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村の人口は減少の一途を辿り、300人を下回った。
足腰も弱り、目も不自由になってきた。
今年がもう、この村最後の鰹漁かもしれない──
そう思って勝男が船を出そうとした矢先、その男は現れた。
「勝男さん……私も一緒に、船に乗っても良いですか?」
村民全員が家族のようなものだった。
名前を聞かなくたって、彼のことはよく知っている。
「亀夫。俺はもう──そう先は長くない。死ぬ気で学べ。お前にその覚悟があるのなら、付いてこい」
「私は海亀村の伝統を──終わらせてはいけないと思っているんです」
そう言って真剣な表情で船に乗り込む亀夫に背を向けて、勝男はそっと微笑んだ。
***要約***
跡継ぎがおらずすっかり廃れてしまったために流通手段を失い、多量に釣っても命を無駄にするだけであり意味がない一方で、鰹漁の技術を忘れないために、鰹を釣っては逃していた。