少年は長い闘いの中、独り、苦しんでいた。彼はもはや立ち上がる事すらできなかったが、「俺はここにいるぞ!」と伝えたくて、ほんの小さく身じろぎすることはできた。
それを何度か繰り返した少年だったが、その後、ついに力尽き……などということは無く、少年はその後何事もなかったかのようにその場を後にするのだった。
どういうことだろう?
転載元: 「少年兵の苦悩」 作者: 由布院 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1482
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少年はトイレの個室で、独り闘っていた。
それはトイレとの闘いでもあり、自分との闘いでもあった。
そう、少年は便秘に苦しんでいたのだ。
その時であった。
トイレが突如、真っ暗になったのだ。
しかし少年は慌てない。何故なら、知っていたからだ。
最近のトイレは、節電のためにセンサーで人の動きを感知しており、
動きが無ければ自動的に電気が消えるということを。
少年はもはや立ち上がることができなかった。
すでに、場合によっては血が流れるほどの闘いの最中だからだ。
しかし、少年は小さく身じろぎをすることで、
センサーに「俺はここにいるぞ!」とアピールして、
再び電気を点すことに成功した。
そして、何度か電気が消えては身じろぎすることを繰り返したころ。
ついに闘いは終わった。
少年は勝ったのだ。それも、無血開門という完全勝利で。
圧倒的な勝利の余韻の前では、尻の僅かな痛みすら心地よい。思わず笑顔がこぼれた。
しかし少年には、トイレから笑顔で出てくる人はちょっとおかしいと考えられる程度のふん別がまだ残っていた。
彼は手洗い場の鏡で表情を引き締め、何事もなかったかのようにトイレを後にするのだった。