修学旅行で「サンウェイ・スタジアム」という超有名テーマパークにやってきた真泥高校3年生の皆さん。
生徒の1人であるエルナトは、同じく修学旅行で来ているらしい別の高校の女の子に一目惚れしてしまいました。
さて、友達思いで世話焼きなクラスメイトである皆さんは、瞳がすっかりハートマークになってしまったエルナト君のために名前も分からないその女の子を見つけ出し、デートさせてあげてください。
***ルール***
a.みんなで力を合わせて、エルナトとその「女の子」とのデートをセッティングし、告白イベントに持ち込むことができればゲームクリア!
※告白の結果はクリア条件には左右しませんがエンディングに左右します
b.皆さんは質問欄を通じてテーマパーク内を探索することができます。手に入れた情報は雑談チャットを通じて皆さんと共有し相談することが可能です。
c.探索手段は「女の子を探す」、「人に尋ねる」、「アトラクションに参加する」、「飲食店で飲食する」などですが、イベントによってできる行動が増える場合があります。
d.ゲームクリアした時点で参加者(質問した人)全員に正解を1つずつ差し上げます。
ゲームオーバーとなった場合は、エルナトの判断により最も物語の進行に寄与したと思われる人物1〜数名に正解を1つずつ差し上げます。
e.ストーリー進行など重要なことは全てヒント欄に記載します。
f.その他、ルール質問はチャット欄または質問欄でお受けします。追加ルールがあればヒントやメモ欄でお知らせします。
***注意事項***
注意1
修学旅行中ですので、集合時間はゲーム内での閉園時間までと決まっています。
現実時間では2018年5月20日(日) 23時頃までとします。
また、質問制限は150回までとします。
150回を超えると、朝を迎えてしまいゲームオーバーとなります。
注意2
人が死んだり怪しい薬を飲まされ子供の体になってしまったりすることはありませんが、バッドエンドがあります。
転載元: 「高台に忘れた物」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1386
※ストーリー概要はメモ帳に記載しています。下記のお話は大まかなストーリーの流れをご理解頂いた上で参照されることをオススメします。
***元ネタ***<
この問題はエルナトが水 空という名義で作詞した「ユラリズム」という詞と、
春野 青という名義で書いている「各駅停車が参ります」という小説とを題材に新たに描いた物語です。
興味がありましたらご参照ください。
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***物語「高台に忘れた物」***
「だ〜るまさんが〜こおろんだ!」
マイアが振り返ると、エルナトは歩みを止めた。
動いてはいけない。思わず呼吸まで忘れて、エルナトは石像にでもなったつもりでじっとその場に留まった。
しかし、マイアが目隠しに使っていた鳥居の方を一瞬向こうとして向かないというフェイクを掛けたことで、エルナトは思わず前のめりに倒れてしまう。
「あー!エルナト動いたー!」
「マイア、それはずるいってば!」
エルナトが拗ねてそう言うと、マイアは意地悪く笑った。
2人は、幼馴染みだった。家も隣同士である男の子と、女の子。
物心が付いた時から、2人でこの神社で遊ぶのが日常だった。
遊び場といえば、この町には神社と遊具もない小さな公園くらいしかない。
海亀町では、その公園にあるベンチを使って、「ベンチから落ちた方が負け」という名前のないゲームが大流行していて、それだけこの町には遊ぶ場所がないということを物語っていた。
しかし、それでも2人の日常は幸せだった。
それがいつのまにか抱いていた「恋心」というものがそう感じさせていたということに、当時まだ小学生だった2人は気付いていなかった。
「ねぇねぇ、そういえば、あの木、すっごい高いよね」
マイアがそう言って見上げた先──「お化けの木」はこの町で一番の大木だった。
「お化けの木って、もう何千年も前から生きてるんだって」
「へー、そうなんだ。本当にお化けみたいだね」
マイアが感心していると、チリンと鈴の音が鳴った。見ると、階段下からエルナトの家の飼い猫であるリンクスが階段を上ってきていた。
「あ、リンクス君だ、こっちおいで!」
マイアは白猫のリンクスのことを溺愛していて、わざわざ猫と戯れるためだけにエルナトの家に遊びに来ることもあって、相手にしてもらえないエルナトそんなリンクスに嫉妬してしまうことさえあった。そういえば彼女は猫のキャラクターであるチャーミーのグッズをいくつか集めていた。彼女の猫好きはリンクスによるものなのかもしれない。
「あれ、リンクス君、何処行くの?」
不意に、リンクスは神社裏の森の方へ走り出す。マイアはそれを追いかけ、エルナトはさらにその後を追った。
リンクスは森の入り口にある「お化けの木」を登っていく。
「リンクス君待ってー!」
「え?おい、マイア、やめとけって!」
マイアはエルナトの制止も聞かず、リンクスを追うようにその「お化けの木」をスルスルと登っていった。エルナトも慌ててその後を追うが、3メートルくらい登ったところでスルリと手を滑らせて落ちてしまった。
ドンッ!!
「あいててて……」
「エルナト、大丈夫!?」
「いててて……なんとか大丈夫みたい……」
「あ、ほら、リンクス君こっちおいで!」
白猫のリンクスに追いついたマイアは、その体を掴もうと両手を離し、リンクスを抱き抱えた。と、その時、マイアの体がグラリと揺れる。
「マイア!!危ない!!!」
足を滑らせてしまったマイアは、6、7メートルの高さから地面に向かって真っ逆様に落下する。エルナトはお尻が痛むのも忘れて、無我夢中で駆け出した。
ズドンッ!!
「いっ!!!!!」
声にならぬ悲鳴を上げたのは、エルナトだった。マイアを受け止めるために差し出した両腕はその衝撃を完全には支えることは出来なかったが、クッションの役割を果たし奇跡的にマイアは擦り傷程度の怪我ですんだ。彼女の腕の中にいたリンクスも無事のようだ。
しかし、硬い地面に打ち付けられた彼の両手には、その全ての力が加わってしまった。
「エ、エルナト……!?ご、ごめん、私がこんな……」
「いてててて、だ、大丈夫だよ、マイア……こ、これくらい……いつっ!!」
「待ってて、すぐ人呼んでくるから!!」
すぐさま病院に連れて行かれたエルナトは、両手の橈骨及び尺骨骨幹部骨折で全治3ヶ月程度と診断された。友達からは両手のギプスがバズーカみたいとからかわれたり、ギプスにう○この落書きをされたり散々であった。責任を感じていたマイアは、彼に変わって授業の板書をノートにとってくれたり、給食を食べさせてくれたりした。恥ずかしいからと断っても彼女は止めてくれなかった。それも、他のクラスメイトたちにとってエルナトをいじるための格好の餌食だった。
このことがきっかけでエルナトは次第にマイアと距離を置き、家が隣同士であるにも関わらずいつしか2人が一緒に学校から帰ることもなくなってしまった。
エルナトが両親から転校の話を聞かされたのは、ギプスが取れて数週間が経ったある日のことであった。これまでの変わらないはずの日常に亀裂が走るのを感じた。
どうすれば良いのか、当時まだ10歳だったエルナトには分からなかった。
そのことを誰にも相談できないまま、クラスメイトたちには突然別れを切り出す形になってしまった。
「エルナト君が転校することになりました。明日、遠く離れた真泥市というところに引っ越すそうです」
教室中が騒然となった。突然のことに、泣いてくれる友達もいた。その時初めて、自分はみんなから愛されていたのだと気付いた。だからこそ、ずっとをみんなに伝えられなかったことを申し訳なく思った。
ふと、彼女のことが気になり視線をそちらに向ける。マイアは笑顔とも泣き顔とも言えない表情でエルナトのことを見ていた。そのことがかえって辛くて、エルナトはそれ以上彼女の方を向くことができなかった。
この学校での最後の授業が終わりを告げた。既にマイアの姿は教室にはなく、他のクラスメイトたちから一緒に帰ろうと声を掛けられ、みんなに囲まれながら家路についた。玄関の前で友達と別れ、門を開けて家の中に入ろうとして──やめた。隣のマイアの家を覗き込むも、彼女が家の中にいるのかどうかは分からなかった。呼び鈴を押すと、程なくして彼女の母親が顔を出した。マイアはまだ家には帰っていないのだという。何処に行ったのだろう──ふと空を見上げると、高台の上、一際大きな「お化けの木」が目についた。今思えば、それは根拠のないものであった。しかし、当時のエルナトには彼女がその神社にいるであろうことが容易に想像できたのだ。考える間もなく走り出し、麓の鳥居を潜る。石段を登っていくと、天辺に赤い鳥居。その、下に彼女はいた。階段の中腹で歩みを止め、息を切らして見上げる。少女と目が合った。彼女はニコリと嬉しそうに笑った。思わず泣いてしまいそうになって、エルナトは笑えなかった。
彼女は、くるりとエルナトに背を向けた。逃げられる──そう思い慌てて呼び止めようとした矢先、彼女は鳥居の柱に目を隠し、そして言った。
「だ〜るまさんが〜こおろんだ!」
マイアが振り向くと、エルナトは思わず動くのをやめた。そして思わず笑みが溢れた。それはいつも通りの日常だった。些細なことで失われてしまった、大切な日常。
「だ〜るまさんが〜こおろんだ!」
急いで階段を駆け上がり、そして動きを止める。3回目でマイアの元に辿り着き、背中をタッチする。分かっていたはずだが、まるでエルナトが近くにいると気付かず驚いたかのようにマイアは小さく悲鳴をあげた。
「捕まえた」
エルナトが言うと、マイアと目が合った。さっきまで溢れていた笑顔は、突如としてその色を失くした。代わりに、彼女の瞳からひと雫の涙が溢れる。ワッと声を上げて泣き出すのと同時に、マイアはエルナトに抱きついた。
「ごめんね……」
はなをすすりながら、彼女は謝った。
「なんで、謝るの?」
「腕の怪我のこと。ずっと、謝りたかったの」
「別に、気にすることないよ。ほら、もう治ったから」
そう言って、エルナトはマイアを優しく抱きしめる。彼女は嬉しそうに笑い、そして手で涙を拭った。
「元気でね。なんにもない町だけど、たまには帰ってきてよ」
マイアの言葉に、エルナトは力強く頷いた。一番上の階段に腰を下ろし、日が暮れるまで他愛のない話を続けた。2人が話さなくなってからの数カ月分の溜まりに溜まった話題を全て吐き出すように。そんな夢のような時間も、いずれは終わりの時間がやってくる。すっかり暗くなり、街灯もない階段を二人三脚でもするようにソロリソロリと慎重に降りていく。コウモリがバサバサと羽音と立てて飛び、お化けの木がガサガサと揺れた。その音に驚いて顔を合わせたが、お互いにあまりに怯えたような表情をしていたので、思わず笑った。結局家に付いたのは20時頃で小学生にしてはあまりに遅い帰宅であったが、転校前最後だからと両親は大目に見てくれた。そして翌日──エルナトは海亀町を旅立った。
***
あれから8年。修学旅行先で2人が再会できたことは本当に奇跡的な偶然であった。
8年ぶりに会った彼女は、記憶の中のあどけなさを多少残しつつもしっかりと大人びていて、時間の経過を感じさせた。すぐに思い出すことができなかったけれど、しかし、あの日から連絡を取り合うようになって色々と話すようになるとその8年という隔たりは一瞬でゼロになった。そんなメールでやり取りが続き──そしてその日を向かえた。海亀町は、当時から何も変わっていないように思えた。
見上げた高台の上の、「お化けの木」。麓の階段を、一段ずつゆっくりと昇っていく。赤い鳥居が見えてくると、そこに立っていたのは一人の女性だった。
彼女は微笑んで、そして彼に背を向けた。彼女が何をしようとしているのかはすぐに分かったので、エルナトは急いで階段を駆け上がった。
「だ〜るまさんが〜こおろんだ!」
彼女が振り返り、エルナトは歩みを止めた。しばらく睨み合った後、彼女が前を向く。しかしそれはフェイクで、突如振り返って階下を見下ろしたので、エルナトは慌てて動きを止めようとしたが勢いに負けてしまい前のめりに倒れてしまった。
「あー!エルナト動いたー!」
「だからそれはずるいって!」
声に出して彼女は笑い、エルナトもそれに釣られて微笑んだ。見上げた先に見えたのは、青い空、背の高い「お化けの木」、赤い鳥居、そして──
「おかえり」
「──ただいま」
何処からか、蝉の鳴き声が聞こえた。