シンディの中の皆さん、こんにちは。今日は皆さんにお願いがあります。これから、病室の中にいる男と話して欲しいのです。男は何か、深い悩みを抱えているようです。どうか、彼の悩みを解決してやってください。
なお、男との長期間の接触は悪影響が予想されるため、ある程度時間が経ったら打ち切りとなります。注意してください。
(年齢や性別は限定しません。自由に話してください)
(この問題はかきくりーむけろっこさんの『私の愛した少年』にインスパイアされて作りました)
転載元: 「男が愛した少女」 作者: tomo (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1248
以下の文章に登場する『シンディ』という人物は、この問題オリジナルのものであり、既存のキャラクター及びこの出題サイトとは一切無関係です
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私はモニターを眺めながら、自分の目を疑った。ブラウン管テレビほどの大きさのモニター画面に映し出されているのは、泣きながら、それでも満面の笑みを浮かべているカメオ。そして、彼と楽しそうに話している、一人の少女。
少女の名はシンディ。カメオの娘である。
カメオとシンディがこの病院に運ばれてきたのはおよそ一週間前。カメオは極度の錯乱状態。対してシンディは、ロボットの様に無表情だった。
聞くところによると、カメオは過去十年間、シンディに過度に厳しい躾を行なっていたらしい。家に縛られる様にして生きてきたシンディはそのストレスから逃れるために、何年もかけて、複数の多重人格を作り上げた。そしてある時、無数の人格が娘の中に存在することに気付いた父はパニックに陥り、娘から逃げる様に、このウミガメ精神病院へ駆け込んできたのだという。
我々医師団は、シンディに現れる奇妙な人格の数々に困惑しながらも、慎重に治療を続けてきた。彼らはお互いの存在を認知しながらも、それぞれが独立した個体であるかの様に振舞っていた。
それから一週間。我々の元に、カメオが思いつめた顔でやってきた。彼は、娘と話してみたいと申し出た。娘がこんなことになったのは自分の責任であり、父親として謝りたいと、彼は必死に訴えた。
その熱意に押され、また、シンディの精神状態も落ち着いてきたということもあり、我々は3つの条件付きで申し出を受けた。
決して人格達を刺激しないこと
直接体に触れないこと
30分を過ぎたら速やかに退出すること
そして彼は、監視カメラ付きの病室へと入っていった。我々は特殊病棟に隔離されていたシンディを連れ出し、シンディとその人格達に説明を行う。『シンディの中の皆さん、こんにちは…』
そして、父と娘の会話が始まった。
…結果は見ての通りだ。今、カメオがシンディに手を振って病室を出た。シンディも、あどけない笑顔で手を振っている。
思えばシンディは、我々医師団の前には決して姿を現さなかった。無数の人格達が、我々をあざ笑うかのように,支離滅裂な発言を繰り返すばかりだった。そんな中で、親子の会話の中でシンディの本来の人格が無事姿を現し、カメオを許してやったというのは、奇跡に近い。
私は手元のカルテに目を落とす。そこには、今までに確認された人格の名前が並んでいる。何度も何度もカメオに質問を投げかけ、シンディ本人の人格を覆い隠した別人格達・・・
そういえば、と私は思い出す。今回現れたシンディの人格は何故か、しゃべり方や身振り手振りがばらついていた。話の内容にもまとまりがなく、不安定な印象を抱いた。そう、まるで複数の人格が、偽物のシンディを演じているかのように・・・
私は首を振って立ち上がった。今は、そんな憶測をしている場合ではない。この後、シンディの精神状態を検査しなければならない。カメオに対しても、カウンセリングが必要だろう。
治療はまだまだ、始まったばかりなのだ。
私は振り返り、もう一度モニターの中のシンディを見つめた。
シンディは空っぽの病室に突っ立って、笑顔を浮かべていた。今まで見せたことがないような、あどけない笑顔。しかし何故か私には、彼女の背後に、得体の知れない無数の影が蠢いている様に見えた。
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ハッピーエンド条件
※30分以内にシンディがカメオを許す
バッドエンド条件
※それ以外