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今日という日を

[ウミガメのスープ]

「店むえ遺伝子・・・?」そう呟いてカメオは、父親の顔を思い出した。何故?


出題者:
出題時間: 2018年4月21日 15:51
解決時間: 2018年4月21日 16:32
© 2018 tomo 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「今日という日を」 作者: tomo (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1183
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夕暮れ時、オレンジ色に染まる町の中を、カメオは息子と手をつないで歩いていた。
「みせ・・・む・・・え・・・いでんし・・・」
 突然、息子が奇妙なことを口にした。
「店むえ遺伝子・・・?」
 カメオはそう呟いて、息子を見下ろす。息子はどこか一点をじっと見つめていた。視線を辿るとそこには、築何年かも分からないような古めかしい店があった。さび付いたシャッターで閉ざされ、最新式の住宅に囲まれて、一層小さくみすぼらしく見えた。そんな店の上に、黒ずんだ、木の看板が掲げられている。そこにはこう書かれていた。
『店務工ぃでんし』
 ああ。カメオは思わずため息を漏らした。自分が子供の頃の思い出が、その古い木の看板から蘇ってきたようだった。
 公園で、父親とともに飽きもせずに遊び続けたあの頃。香ばしい匂いが漂う夕暮れの町を、父と手を繋いで帰ったあの頃。店が一斉にシャッターを下ろし始め、早く帰らなきゃと、父親の手をしきりに引っ張ったあの頃・・・
 カメオは手を引かれる感覚で我に返った。見ると、息子が頬を膨らませて自分を引っ張っている。すっかりお腹がすいてしまったらしい。カメオは思わず苦笑して歩き出した。そして思う。息子にも、今日という日のことを懐かしく思い出す日が来るのだろうか。自分のことを、良い父親だったと思い出してくれるのだろうか。
 カメオは沈む夕日に向かって歩きながら、今は亡き父親の、あの優しい顔を思い出していた。


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パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy