【贈りますか？リサイクル】your hands all over this legend

「ちょw うーわww 負けたわー　まぢレジェンド」

「ちょっといきなり失礼じゃないですか？何言ってるんです？」

空翔は、急に目の前に現れた派手なギャルに眉を潜めた。

「どうしてこんなことになってるのかわかんないんです。毎日彼女に一生懸命メールを書いてるんですが、送れないんですよ。っていうか送ろうと思うと急に意識が飛んで、またやり直しになる…」

「あー　ごめんね　もうお兄さんこの世にいないから」

「は？？」

「ふつーに考えてみ？毎日送り続けてたとしたら約９０年だよ？」

「え、今日は２０ＸＸ年…」

「ううん、多分リアルワールドではそこから９０年近く経ってる。そんなに長い間お部屋をそのままにしておいてくれてるんだね。空翔おじいさんメモリアルルーム、みたいな扱い。愛されてる〜〜。さすが社長ご令息ってやつ？
あ、会社は妹の海帆さんが継いで今ではそのお子さんやお孫さんが回してくれてるからノーウォーリーズ。それにしても、パソコンまで使える状態に残してくれてるとか、すげぇw」

「…あなたは？」

「私？まみたん。えんまっちの部下。成仏できない人を説得するバイト。」

「えと…じゃあ、僕は、９０年近く死んだことに気付かずに…？」

「そうそう。あ、私もだよー。３０年間死んだことに気付かず、街角で好きな人が現れるの待ってた。
でも、３倍かー負けたわ…ところで、この４通の受信メールって今まで読もうとしたことなかったの？」

「えっ？」

２０ＸＸ年６月２０日
　空翔くん
　今日はありがとう。
　本当に私でいいの？って思ったよ。
　だって空翔くんは本当になんでもできるすごい人だから。
　でも、好きだって言ってくれて、本当に嬉しかった。
　これからも、よろしくね。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　結衣菜

２０ＸＸ年６月２３日
　空翔くん
　メールの返事がないので、心配しています。
　大学にも来てないみたいだし。
　私が何か悪いことしたんだったら、ごめんなさい、謝ります。
　電話でもメールでもいいので、お返事待ってます。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　結衣菜

２０ＸＸ年６月２５日
　空翔くん
　お母さんからご連絡いただきました。
　あんな楽しい１日の後に、そんなことになっていたなんて。
　私と会わなかったら、事故にも遭わなかったんだよね。
　どうしていいかわかりません。
　お母さんは、私のせいじゃないって言ってくれてたけれど…
　どうか空翔くんの意識が戻って、このメールを読んでくれる日が来ますように。
　心から祈っています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　結衣菜

２０ＸＸ年７月１５日
　空翔くん
　届かないのはわかっているけど、最後に言葉を贈ります。
　短い時間だったけど、楽しかったです。
　どうもありがとう。
　いつか私がそっちに行った時、会えますように。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　結衣菜

「そんなに泣いちゃってイケメンが台無し…まあ私も気持ちは分かるけど。
　ところでレジェンドはどんなメール書いたの？読んでいい？」

「…やめてください」

「わかった。やめとくw
　そうそう、最近地上では健康寿命が急激に伸びてるらしいけど、さすがに３年前、結衣菜さんもこちらに…」

「ああ、そうですか…」

「うん。幸せなご家庭に恵まれて天寿を全うしてるよ。会う？」

「どうしよう…」

「ま、向こう行ってから考えりゃいーっしょ。それとさ、私もだけど、こういう特殊な経験持ってた人はこの仕事向いてるみたいらしいんだよねー。一緒にえんまっちの所で働かない？」

「え？」

「まあとりあえずいこ？レジェンド」

「はい…空翔ですけど…」

そう言ってまみたんが空翔の手を取ると、パソコンの画面はふっと落ちた。

そこ、９０年前のパソコンが使えるのかよとかツッコまないこと。
（まみたんシリーズは非現実ファンタジーです♪）