【食器ますか？リサイクル】on this lovely Bella Notte

俺は、妻を心から愛している。




妻は優しく、頭がよく、（以下略）

たかがメシマズぐらいなんだと言うんだ。

そんな具合で、妻にはインスタントラーメンを出してくれと頼むことが多かった。

たまに、「これじゃ野菜が足りないでしょ」とか言って、この世のものとは思えない副菜がついていることがあったが、それでもとりあえず腹は膨れた。

でも、いつもラーメンが食べたいと言われて、少し寂しそうな顔をしている妻を見ると、良心の呵責を感じることもあった。

大変な張り込みを終えて帰ってきたある日、家にはラーメンでない匂いが立ち込めていた。

決して毒物に類するような匂いではない。
焦げ臭くもないし、刺激臭でもない。

むしろ、食欲をそそるような香りだ。

「これは、何…？」

「えーっと、ネットで焼き鳥パスタというのを見かけたの。なんか焼き鳥はよくわからなかったから入れなかったけど、コンソメスープがあったので、それに、サラダチキンと、野菜も必要だと思ってミックスベジタブルと、スパゲッティを入れて煮てみたの。」

焼き鳥の部分は何言ってるかわからなかったけど、そんなにやばそうな匂いはしない。

しかし、フォークでスパゲッティをすくいあげようとしたらぶちぶちとちぎれた。

「いつ入れた、これ？」
「４時間前？なかなか帰ってこなかったから…」

そんなに長く入れてたらそりゃあぶちぶちにもなる。
でも、味は普通にうまい。
コンソメとミックスベジタブルとサラダチキンなんだからまずくなりようはないんだが、そこに黒蜜とか多量の梅肉エキスとかトニックウォーターとかが入ってないだけ大進歩だ。

「食べにくい？ごめんね。」

いや、これ謝るんだったら今までのあれやこれはなんだったんだ、って言いたい気持ちは置いておいて。
こんな食えるものが出てきたのいつ以来だろう。
茹ですぎたぐらいなんだというんだ。
スプーンで食べりゃいいだけの話だ。

「いつもありがとう。すごくおいしいよ。ほんとに」