国際協力機関で働く若手職員岡本茨が、海外赴任して1か月になろうとしている。
前任者の猫山御影は、仕事はもちろん、プライベートも引き継いでくれた。
そう、茨は御影の住んでいたアパートの隣室に入居したのだ。
「このスーパーのこれ便利だよ」「乗車券はこれを買うといいよ」「トラムの駅まではここが近道」「ここのレストランがうまい」など、地元の情報もいろいろ残していってくれた。
仕事が忙しくなってくると、料理をするのもしんどい日がある。
でも、一人で外食も、海外だと割と気を使う。
茨は、何か買ってきて夕食を済ませようと考えた。
とはいえ、日本のようにコンビニがあるわけでもなく、スーパーも早く閉まるので、御影がおすすめしてくれたレストランでテイクアウェイをすることにした。
店は薄暗く、雰囲気もなかなか良いが、テイクアウェイを頼む客もそこそこいるようだ。
「これでいい?」持ち帰り用のメニューを指差してそう尋ねる店員に対し、考えるのも面倒なので黙って頷く茨。
家に帰る。
一人きりの食卓。
茨はスプーンを口に運ぶ。
(御影さんのことは尊敬しているし、個人的にも仲が良くて、なんでも知っていると思っていた。
でも、まだ私の知らない顔もあったんだなあ。
次は暑い国に赴任するらしい。
それは、御影さんにとって幸せなのかな。辛いのかな。)
御影のことを思い出した茨の目からは、涙がこぼれ落ちた。
なぜだろう?
*3月15日(金)23時頃終了予定です。
*過去問の知識は必須ではなく、必要な情報は問題文に示しています。リンクを貼っている過去問の世界観を知っていると、少しだけ楽しめるかもしれません。
転載元: 「【指差す】look at how my tears ricochet」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9511
*激辛好きの御影が行きつけだったエスニック料理店で、御影と間違えられた茨は、黙って激辛メニューを出された。
はぁ。
疲れたから、今日はなんか買ってきて夕ご飯済ませようっと。
あ、そういえば、
「アパートの隣のインド料理屋うまいよ!テイクアウェイもやってるしおすすめ!」
って、御影さんが勧めてくれてたな。行ってみようかな。
お店に行ったら、店員さんは、これでいい?ってセットメニューを指差してきた。
よくわかんないけど、まあ初めてだし、お勧めのものを食べたら良いんだろうな。
ただいま〜。
さて、早速食べてみよう。
キーマとタンドーリ、サモサとパッパダムとチャパティか。うん。うまそう。
いただきまーす。
うげっっっっ。なにこれ。激辛じゃねえか。っていうか痛い。涙出る。号泣もの。
これ、流石にあの店のデフォルトじゃないよな…。
そういえば、他のお客、「マイルドで頼む」とか言ってた気がする。
さては御影さん、ずっと「Very spicyで」とか頼んでたんじゃないのか。
激辛好きだなんて、今まで聞いたことなかった。
あんなに仲良かったのに。まだまだ知らないことあるんだなあ。
考えてみれば、私と御影さんは、そっくりというほどではないが、多分カテゴリーとしては似てる。
背は私の方が低いけど、御影さんもそんな大柄じゃない。
少なくとも、外国人から見れば、同ジャンルレベルだ。
店も暗かったし。
そして、この辺にはあまり日本人が住んでいないから、私のことを御影さんだと思ったとしても不思議がない。
仮に、私と御影さんが別人だとわかっていたとしても、「日本人は激辛好き」と認識されてるおそれもある。
次行った時はちゃんと言おう、「Mild, please」 って。
そういえば、御影さん、次の任地はタイだって聞いた。幸せなのかな。
幸せなんだろうな。
本場のタイ料理は辛いのかな。
辛いんだろうな。
…あー、やっぱこのキーマ、かっら!!!!!
茨の目からはまた、涙がこぼれ落ちた。
結局、キーマはヨーグルトとかチーズとか半熟卵を入れて、何とか食べ切った。