【道ますか？オマージュ】bust the rearview and fire up the jets

＊観察してわかること：
・カメオは白髪の老人。
・年にしては元気そうで、比較的大柄である。服装も小ざっぱりしておしゃれである。
・荷物などからして、旅慣れた様子に見える。
・ここは電車の中。
・カメオは、布でこっそり隠すようにして、マネキンを窓に向けている。
・マネキンの頭部は４０代ぐらいの男性のもの。ほぼ実物大で、整った顔つきをしているが、近くで見れば明らかに本物ではないとわかる。
・マネキンはシャツに包まれている。
・シャツを調べると、男物ではあるが、明らかにカメオのサイズよりは小さいことがわかる。

＊カメオに質問してわかる4と：
・今は２０４０年１２月５日。９０歳である。
・カメオは結婚しておらず、子どももいない。
・恋人がいるかと聞かれたら、いたと答える。
・そのマネキンはどこで手に入れたのかと聞かれたら、「知り合い」が作ったものだ、と答える。
・そのマネキンが誰なのかと聞かれたら、その知り合い自身だと答える。
・知り合いのことを聞かれたら、もう亡くなった人だと答える。
・さらに詳しく聞かれたら、亡くなった恋人だと答える。

＊「自分のような初老の男がマネキンの頭部を持って旅行している」ことについて、明らかに少し奇行である自覚はある。
　だから、あまり答えないようにしているし、参加者に声をかけられると少し罰が悪そうにこそこそとしまうような仕草を取るし、ストレートな質問にはあまり答えようとしない。
　同性の恋人を思い続けていることについて、第三者に話しづらいと言う気持ちもある。
　心に寄り添って丁寧に質問をしてくれた時にはじめて、自分と恋人のことについて語る。

＊馬鹿にするような態度を取ったり、犯罪扱いしたりするとカメオは心を閉ざす。
　カメオの行動を否定するようなことを言うとBad endとなる。

＊過去に拘らず、前向きに生きた方がいい、というぐらいであれば、Normal endとする。

＊カメオの思いを受け入れてあげるような発言をすると、Happy endとなる。
　そして、カメオとマネキンの写真を撮ってあげることで、もう一つFAを追加する。

僕が君と知り合ったのはまだ４０代だったか。
たまたま隣の部屋に引っ越してきたのがきっかけだった。君がベランダのゴミをカラスに食い散らかされてパニックになってたのを見かけた時は、ラッキーだと思ったよ。

それから、僕たちは、いろんな所に旅をした。
それまで一人旅が好きだった僕と、飛行機なんて大嫌いだった君。それが、二人で世界中を飛び回るようになったんだから、不思議なものだ。

君が少しずつ記憶を失い始めるまで。

そして、君の僕に対する記憶がなくなった少し後に、君の命も消えた。

僕は、小さくなった君と、君の荷物とともに、新しい街の部屋に引っ越した。

君の荷物の中には、不思議なものがあった。

マネキンの頭部。
それは、出会った頃の、君の姿だった。

そこには手紙がついていた。

「だんだん僕は君のことを忘れていく。
　僕にはそれがわかるんだ。
　僕は君と出会えて幸せだった。
　人見知りで、引っ込み思案で、出不精で、飛行機だとか外国だなんて考えてみたこともなかった僕を、外の世界に連れ出してくれた君。
　感謝の言葉も見つからない。
　
　もし、僕がこの世を去ってもまだ君が元気に旅して回れるのであれば、この「僕」も一緒に連れて行ってもらえないか。
　多分、不審がられるだろうから、無理は言わないよ。

…でも、人のベランダに生ゴミを放り込んだんだから、そのぐらいやってくれてもバチは当たらないんじゃないかw？？」

…そうか、君には全部わかっていたのか。

それからも、僕は君と旅を続けた。

こっそりとだけど、車窓に移る田園風景や風光明美な観光地、青く輝く海、ホテルからの夜景、全部君に見せてあげた。
昔と同じようにね。

（申し訳ないとは思ったけど、飛行機に乗る時はcheck-in luggageにしたよ。
　怪しまれて没収されたらたまったもんじゃないからねw）

今回が最後かな。
また次もあるかな。

今回が最後だとしたら、それはもうすぐ君にまた会えるということだ。
それはそれで、楽しみたね。

＊当問題に関してだけ言えば、オマージュにする必要はありませんでしたが、過去問との整合性の都合上、カメオとすることは避けました。
　これまで恋人の方がカメオという設定だったので。
＊そんなに遠い未来ではないですが、健康寿命は急激に伸びているという設定です。
　これと同じ世界観です。