格下に勝っただけのボクシング世界チャンピオン

ボクシング史上最強の世界チャンピオンを倒して新チャンピオンになったイノウエ。
その戦いを目の前で見ていた興奮の余熱がまだ僕の心の中にある。

尊敬する選手同士が繰り広げた歴史に残る激闘
その決着がついてから一時間ほどしかたってないの無いのだからそれも当然だろう。

しかし僕の友人鈴木は「イノウエは格下の雑魚狩りで勝っただけこの程度で調子に乗っちゃダメ」
なんて発言をするもんだから僕は呆れため息をついて下を向いた、こいつはちょくちょくこんな発言をするんだ。
しかもこのタイミング、無敗だったチャンピオンその敗北に悲しむ大勢のファンの耳に聞こえたことだろう。

だが僕が聞くとどうなんだこれって発言をしてても周囲からは好かれるのだから不思議なものだ。
今回も特に鈴木に対して怒りを抱く人はいなかったようだ。

ひょうひょうとしていつも余裕を持って見える雰囲気が功を奏しているのだろうか？
前日にあるものを落としてた時も明るくふるまっていたしコイツが暗い顔するのを見たことがないかもしれない。

と、頭の中で考えをしてる間に鈴木が発言した台詞に僕は驚愕することになる。
無くした物を取りに行くためにまたあの会場に戻るというのだ！

さて鈴木が「落とした物」とは一体なんなのであろう？

僕が尊敬する世界チャンピオンであると同時に気心の知れた友人でもある鈴木。
自虐ギャグを多用する癖があるがファンにはそれもうけているようで好意的に見られている。

とても強いボクサーなのに威圧感がなくいつもひょうひょうとしている。
「体重を落としている」時も不機嫌な様子なく明るいその精神性は尊敬すらおぼえる。

その彼が試合後の自虐ギャグで笑いを取った後の発言に僕は驚愕した
「また再挑戦します、失ったチャンピオンベルトを取り戻すためにまたあの舞台に立つ」
彼の年ならもう引退してもいいはずだ、なのに一度負けた若いチャンピオンに対する闘争心が萎えていない。

明るくひょうひょうとしているだけではない鈴木の精神性の気高さに僕は改めて尊敬の念を抱いた。