元旦に、男は女と初詣をした。
神社を訪れた男は、女が参拝する様子を見て、
「ふっ…こいつァかなわねぇな…」
と、心の中で白旗を上げた。
なぜだろう?
*Q4 アシカさんのリサイクルです。
転載元: 「【まいりますか?リサイクル】puttin' my defenses up」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10263
*日頃まあまあ親しくしている女子が、「出会い」にご利益のある神社で真剣に参拝していたから自分の願いは「叶わない」と思った。
「みんな〜、初詣行こうよー!!」
そう言い出したのは、クラスの中心の向日夢花さんだった。
向日さんの周りには、いつも大勢の男の子や女の子がいる。
いわゆる「一軍」の子が多いけど、そうじゃない子とも分け隔てなく仲が良いのが、向日さんのすごいところだ。
「いろんな神社回るの。楽しそうじゃない?
学業成就とか、厄除けとか、金運とか、もちろん恋愛も💞」
「あー行く行く!!」
たくさんの子が手を挙げた。
「えーっと、私も良いかな?」
その声を聞いてドキッとした。
かすみちゃんだ。
かすみちゃんは大人しい子で、あまり目立たない。
僕はまあまあ話す方だと思ってるけど、それは多分たまたま席が隣だから。
かすみちゃんは、向日さんたちとは普段そんなに一緒にいない。
だから、急にそんなことを言い出してびっくりした。
「おっけー一緒に行こ?」
「あの、僕も良いかな?」
「もちろん!Everyone’s welcome!!」
これまで向日さんとはほとんど話したことがなかったけど、向日さんはそんなこと一切気にしていない様子だった。
初詣当日、クラスの子は15人ほど来ていただろうか。
彼氏の拓海くんの手を強引に引っ張って進む向日さんを先頭に、みんなわいわいと楽しげだ。
僕はかすみちゃんの少し後ろからついていった。
「えーっと、大本命の恋愛関係はここだねー…ん?いくつか神社が分かれてる??」
「あのね、夢花ちゃん、恋愛でもお願い事によって違うらしいよ?こっちは今付き合っている人がいるところ、こっちは思い人がいる人…片思いってことだよね。で、こっちは出会いを探してる人…」
「さっすが美咲。詳しいな〜。じゃあみんなそれぞれのところに行こ?」
え、僕はどこに行けば…そう言っていたら、かすみちゃんはまっすぐ「出会い」の神社に進み、長い時間をかけて参拝していた。
そうか。新しく出会いを求めてるんだな。
っていうことは、「すでに出会ってる人」は対象外ってことか。
「ふっ…こいつァかなわねぇな…」
僕は自分の願いが叶わないことを認め、そっと思いを諦めた。
*「白旗を上げる」には、「降参する」他に、「無理だと諦める」の意味もあります。